精子正常形態率と食事内容との相関関係

以前こんな記事を書きました。
糖質制限と精子・妊娠への好影響

こちらをきっかけとして、食事と精子の質・量に関しての相関関係の調査がたくさんされていることを知りました。今回はその食事と精子との関係性の中でも、僕自身が最も関心の高く最も改善したいパラメータ、精子正常形態率と食事との関係をご紹介していきます。

アジア人を対象とした食事内容と精液の質との関係性

糖質との関係でも取り上げた論文が以下です。
The Association between Dietary Patterns and Semen Quality in a General Asian Population of 7282 Males
(日本語訳:アジア人男性7282人における食事パターンと精液の質の関係性)

こちらで以下の結論概要が述べられています。

全7282名の男性に食事パターンに関するアンケートを実施し、それぞれの精子検査を行った。 「欧米式の食事」が多いほど、精子濃度および精子正常形態率の低下が生じた。 同様に、「甘いお菓子や甘味飲料(ジュース等)」の摂取量が多いほど、より低い精子濃度となる関連性があった。「高炭水化物食」の摂取量の増加は、異常な精子運動率および前進精子運動率、の増加と関連していた。 同様に、「高ナトリウム食(インスタント食品等)」の摂取量の増加は、異常な精子正常形態率の上昇と相関していた

すなわち、欧米式の食事または高ナトリウム食の食事が多いことで、精子正常形態率が低下するという結果が得られています。

ここでゆう、欧米式の食事とは、ミルク、チーズ、ヨーグルト、肉、シーフード、サラダ、揚げ物の7つの食品郡を含むものを指すものとしています。また、「高ナトリウム食」は加工缶詰、インスタントラーメン、調味料の食品群を指すものとしています。

欧米式の食事は、ここで挙げている食品群だけを見るとそんなに悪いものなのか?という印象を受けますが、欧米食として代表的な、加工肉、乳製品、揚げ物を多く摂取することを指すと考えて良いと思います。

西洋式の食事と地中海式の食事による比較①

以下において、地中海式の食事で精液所見全般が改善され、精子正常形態率も同様に改善された報告がされています。

地中海式ダイエットで精液所見が改善される
Association between adherence to the Mediterranean diet and semen quality parameters in male partners of couples attempting fertility
(日本語訳:妊活中の男性に対する地中海式の食事と精液の質との相関関係)

地中海式の食事率が最も高いグループの男性と、最も低い男性のグループに分けた際の精子正常形態率の結果は

50.0%(地中海式食事多) : 28.8%(地中海式食事少) (P = 0.023)

サンプルは225人ということで、多くはないですが、サンプルの時期が2013年~2016年ということで、かなり現代に近い環境での結果です。結果としてはかなりの差が発生していますね。

地中海式の食事とは、果物、野菜、穀物、豆、魚などの摂取をベースとして、肉や乳製品の摂取量を抑えた食事形式です。

西洋式の食事と地中海式の食事による比較②

地中海式の食事との相関関係は上の報告以前にも調査されていました。
食事パターン(地中海食・西洋型)と精巣の働き
Mediterranean and western dietary patterns are related to markers of testicular function among healthy men
(日本語訳:地中海式の食事と西洋式の食事形式との男性の精巣機能との関連性)

そして、こちらの結果では、精子正常形態率は、なんと、西洋式の食事が多い程良いという結果を出しています。

明確な相関関係が見られたようですが、過去の研究結果を踏まえて、これは一時的な結果かもしれないとも言及しています。また、精子濃度や運動性など正常形態率を除く他の精液所見に関しては、地中海式の食事のほうが良好であることから、この論文の結論は、地中海式の食事が、精液に良い影響をもたらす可能性を示唆する結果であった、としています。

・・んー、正常形態率に関してももう少し責任を持った報告をしてほしいんですが・・。と、思いはしたものの、精子濃度が地中海式食事のほうが高いということは、例え西洋式の食事で精子正常形態率が上昇しても、正常形態である精子の数自体が増えてるとはいえないんですよね。

この結果からは、精子正常形態率改善には、どちらの食事がいいとはいいきれない微妙な結果ですが、なんにせよこちらの論文の結論は、「地中海式の食事が精子の質に良い影響をもたらす可能性のあるもの」としています。

まとめ

これらの結果から精子正常形態率に関していえることは

  • インスタント食品、缶詰、調味料などの高ナトリウム(つまり味が濃い)食品は悪影響を及ぼす(ほぼ確定)
  • 西洋式の食事(加工肉や乳製品、揚げ物)が多い場合、悪影響を及ぼす可能性がある(確証性不明)

となります。

西洋式の食事に対する考え方が最後の論文報告でなんとも微妙ではありますが、個人的な解釈としては、「肉も一定量必要だが、加工肉や乳製品、揚げ物はある程度控えたほうが良い」と考えることにしました。また、地中海式の食事で取り入れられる、ナッツやオリーブオイル、魚、野菜は積極的に取り入れるべきであると考えています。

また、高ナトリウム食品は、インスタント食品、缶詰、調味料を挙げていますが、そもそも高ナトリウムとは味が濃い(しょっぱいものの)こと。インスタント食品など、あきらかに健康に悪いものに限らず、味が濃い(塩分多量)ものの摂取自体避けるべきかどうかは明言されていませんが、一般的な健康論としても控えたほうが良さそうと考えています。

今後も、食事と精子との関係は調査していこうと思います。