こんにちは、ケイジです。
前回、初めての体外受精・顕微授精開始に伴い、採卵や受精(媒精)について基礎的な内容からレポートしました。
前回の記事はこちら:初めての体外受精・顕微授精開始!基礎的な内容から費用までレポート
今回はその続き、媒精後の受精卵成立から胚盤胞まで培養する、培養フェーズをレポートしていきます。
今回も結構長くなってしまいました・・。かなり基礎的な知識まで触れているので、不妊治療に詳しい方は飛ばし読みしてくれればと思います。
受精方法と培養1日目~受精卵の成立~
採卵日には、採卵した卵と、採精した精子を提出し、受精方法や培養方法などを培養士さんと相談して帰宅しました。
培養の経過報告はメールにて、定期的にもらえるようになっていました。最初の報告は培養1日目、すなわち採卵日の次の日でした。
まず、今回我々が選択した受精方法は、
体外受精(C-IVF)4個、顕微授精(ICSI)4個のスプリットICSI
でした。
これを踏まえて、実際に行われた受精方法の報告が以下です。
- 顕微授精(ICSI):4個
- 体外受精(C-IVF):4個
- レスキューICSI:2個
つまり、「体外受精4個のうち2つが受精不成立となったため、それら2つにレスキューICSI(体外受精後の顕微授精)が行われました」という報告です。
続いて、受精状況の報告が以下です。
- 正常受精:4個
- 未成熟卵:0個
- 未受精卵:1個
- 正常受精未確認卵:3個
まず、ざっくりと解説すると
正常受精 → 正常な受精反応があるので問題なく培養
未成熟卵 → 卵が成熟しなかったので受精まで進めなかった
未受精卵 → 正常な受精反応がないので培養不可
正常受精未確認卵 → 受精反応はあったが、不確定要素がある。正常受精の可能性があるので培養する
ということです。
特に難しいのが、「正常受精未確認卵」ですよね。一番微妙なもの。特に今回はそれが3個もあったので。
この詳細について医学的な見方の説明書なども頂きましたが、わかりやすいのが以下のはらメディカルクリニックの培養士さんのブログ。
簡単にまとめると、正常受精を確認するには、極体というものと、前核というものを2つずつ確認する必要があるが、「極体が2つあるが、前核が0個または1個の場合を正常受精未確認とする」ということです。前核は一定時間しか確認できないため、見逃し等の可能性も考慮した上で「正常受精の可能性あり」とする、ということです。そのため、培養が継続されます。
以上が培養1日目の報告となります。
培養3日目~正常な受精卵を培養~
続いて報告を受けるのは培養3日目となります。報告内容が以下。
- 採卵数:8個
- 分割胚数:4個
- 未分割卵数:3個(受精の反応は見られるものの、未だ分割が開始していない1細胞卵)
- 培養中止卵:1個(未受精卵)
いよいよ胚盤胞までの培養、細胞の分裂が始まりました。
もう、この時点で我々の遺伝子が合わさった卵が成長を始めているんですよね。愛おしい気持ちになりますね。
そんな気持ちとは裏腹に、すべての受精卵たちがうまく育ってはくれません。
まず、「未受精卵」。こちらは、上でも軽く挙げた、「極体と前核が2つずつ必要」という部分の、極体が1つしかできていないので、未受精確定となっています。受精の可能性を残すには、なんにせよ極体が2つ必要です。
続いて、「未分割卵」。1日目の報告にある、「正常受精未確認卵」がそのまま未分割卵となりました。正常受精未確認でも、正常受精と同じ見た目の1細胞の受精卵になり、正常受精卵と同じようにスタートラインには立ちます。しかし、その後2日経っても細胞分裂がすすんでいません。こうなると、やはり何かしら正常受精卵には至っておらず、胚としての成長はかなり厳しいと考えられます。
そして、「分割胚」。こちらが、正常に細胞の分割が開始して胚として成長しているものです。
分割胚には、「Veeckの分類」という評価方法でグレードがつけられます。簡単に言えば、きれいに分割されているかを評価したもので、G1からG4まであり、G1が最も良いです。
分割杯の詳細な報告が以下。
- 12cell【G2】:1個
- 10cell【G3】:1個
- 8cell【G1】:1個
- 5cell【G3】:1個
グレードも大事ですが、分割数も大事です。総合すると、この時点で6cell以上、G3以上が良好胚とのことです。
というわけで、5cellの卵は厳しそうな雰囲気をだしつつ、ひとまず3つは順調そうで一安心でした。
しかし、こうやって1段階1段階で、どんどん振るいにかけられていく我らが卵たち・・。ほんとに、妊娠するというのは大変なことなんだと実感しますね。
以上が3日目の報告でした。
3日目は培養継続するかの分岐点
3日目は、実は培養を継続するかの1つの分岐点でもあります。(少なくともはらメディカルクリニックの場合には。)
そもそも、胚の培養をどこまで行うかは2種類から選べてそれが、「初期胚」と「胚盤胞」です。
初期胚を選択する場合、3日目で培養を終了し、凍結または母体への移植となります。培養は過程が進むに連れ、失敗に至りやすくなるので、この時点で終了することで失敗の数が減ります。しかし、胚盤胞に比べて移植後の妊娠率は低くなっています。
胚盤胞を選択する場合、5,6日目まで培養します。そこまで培養して、初期胚よりも過程が進んだ状態で移植することで、妊娠率が向上します。ただし、胚盤胞までの培養は、その評価方法含めて、うまくいかない、つまり胚盤胞までたどりつけないものもたくさんでる、ということです。
ということで、妊娠率自体を考慮するなら胚盤胞まで育てるのが望ましいのですが、なかなか胚盤胞までたどりつかない人や、できるだけ早く自然な形(母体)での成長環境に置きたい人が初期胚を選択することとなります。
培養自体、4日目以降も行うかとその数でも多少費用が変わります。
培養3日目まで、受精卵5個以下 | 36,000円 |
培養3日目まで、受精卵6個以上 | 41,500円 |
培養6日目まで、受精卵5個以下、4日目以降5個以下 | 53,000円 |
培養6日目まで、受精卵6個以上、4日目以降5個以下 | 59,000円 |
培養6日目まで、受精卵6個以上、4日目以降6個以上 | 60,500円 |
今回は、一番下の「6日目まで6個以上」のパターンです。
今回正常受精未確認卵が3つあったので、それらを3日目までであきらめる、ということもできました。ただ、そうしても費用は表一段上の1500円安くなる程度。それならば、3日目1細胞状態でもわずかな可能性にかけて培養継続することを選ぶべき、と考えました。
培養5,6日目~胚盤胞にできたか確定~
最後の報告を受けたのが6日目の夕方でした。
報告は1日目の朝、3日目の朝、は確定で、最後は「状態に応じて5日目の朝~6日目の夕方までのどこか」と説明を受けていました。その中で最も遅いタイミングで報告を受けることとなりました。
5日目の朝に報告を受けるということは、そこまでに培養がすべて終了したということ。5日目、6日目となかなか連絡がこない時点で、うまくいっていない要素が大きいのではないかという不安は募っていましたが、当たらずとも遠からずといったところでした。
結果が以下。
- 凍結できた胚:1個
- 5日目凍結胚:グレード4BB
- 凍結できなかった胚:7個
というわけで、最終的な結果としては
凍結できた胚盤胞は1つ!でした。
3日目の報告時点で、良好な部類の胚が3つある認識だったので、正直2つ以上は期待していました。それに対して、結果一個ということで少しへこみはしました。しかし、気持ちを切り替えて、1つでも胚盤胞になってくれたことをありがたく思うことにしました。
この結果が物語っているように、受精してそして胚盤胞まで育つということは、本当に難しいことなのだと思います。その中でがんばった我らの遺伝子、細胞たちが1つでも結果を残したことをうれしく思うべきなんだと考えました。
さらっと記載にしてあるグレードについて。
胚盤胞のグレード評価は、3日目の初期胚とは別の「Gardnerの分類」という手法で評価します。
詳細は、専門の文献等を参照してもらったほうがよいですが、簡単に説明します。
4BBの場合。
最初の数字「4」がステージを表しており、胚盤胞の成長度合いを示します。「胚盤胞として移植」を意味するためには基本的に4または5が必要です。
次のアルファベット「B」が内細胞塊というものを表します。細胞数の多さや密着度の評価です。AからCまであり、Aが最高評価です。
次のアルファベット「B」が栄養外胚葉というものを表します。細胞数の多さや、それによる上皮の形成具合のことです。AからCまであり、Aが最高評価です。
胚盤胞のグレード評価に応じた妊娠率が以下の図です。
表を見るとわかりますが、評価での比重が大きいのは、
ステージ > 内細胞塊 > 栄養外胚葉
です。まずステージが4,5にないと、AAだろうと25%まで下がります。また、栄養外胚葉がCでも内細胞塊のグレードがよい場合に妊娠率が高いことがわかります。また、CCという評価は載っていない、すなわち妊娠が期待できないもの、ということです。
はらメディカルクリニックでは、凍結胚にできる基準として4BC以上としています。
というわけで、今回の我々の胚盤胞4BBの妊娠率は38%。1/3以上は妊娠する確率だが・・ちょっと不安ですね^^;。
とはいえこの胚盤胞でうまくいくと信じて、うまくいかせるために、体調を整えていく次第です。
以上が最後の報告でした。
後日詳細
ここまでが、主要な結果で、後日の診察で詳細な結果と説明をいただきました。
培養経過を表にしてみます。
手法 | Day0 | Day1 | Day3 | Day5 | Day6 |
---|---|---|---|---|---|
顕微授精 | 成熟卵 | 正常受精 | 10cell G3 | 胚盤胞 4BB(凍結) | |
体外受精 | 受精 | 正常受精 | 12cell G2 | 胚盤胞 収縮 | 胚盤胞 4CC(破棄) |
レスキュー顕微 | 成熟卵 | 正常受精 | 8cell G1 | 桑実期胚 | 初期胚盤胞(破棄) |
レスキュー顕微 | 成熟卵 | 正常受精 | 5cell G1 | 桑実期胚 | 桑実期胚(破棄) |
正常受精未確認卵も過程をいただいてますが、すべてDay3以降が1cellという状態から変わらず、という結果だったので省略しています。
結果の詳細からわかることは、
- 惜しい胚盤胞4CCもひとつあった
- 体外受精でも正常受精・胚盤胞培養できているものもある
- 顕微授精でも正常受精しないことが結構ある
- レスキューICSIは、初期胚まで良好、最終的に育ちきっていない
といったところです。
体外受精で受精・培養まで確認できたのは、ひとつよかったことでした。正常形態率の問題から、顕微授精以外で、そもそも受精するのかどうかが気になっていたので。それから受精障害というわけではないこともわかりました。これで、一応自然妊娠の可能性も常に低いながらあるはずだと(勝手に判断して)、今後も希望を持ち続けることができます^^;。
それから、顕微授精でも正常受精にたどりつかないことが多かったのが驚きでした。顕微授精の受精率は一般的にも80%以上の受精率といわれており、受精率は高い手法です。
今回の顕微授精の受精率は、5/6個で、83.3%という扱いでした。つまり、正常受精未確認卵も受精率にはカウントされています。これが一般的なのかはわかりませんが、そこまで含めると確率としては一般的なレベルに到達はします。しかしながら、実際には正常受精未確認卵は、やはり正常受精のような振る舞いはせず、胚盤胞へ育つ見込みのないようなものでした。ということで、今後も踏まえて、顕微授精をしても必ずしも受精まで容易になると考えることはできないと認識しました。
以上が詳細な結果でした。
培養の費用
最後に、今回かかった培養フェーズの費用がこちらです。
培養費用(6日目まで6個以上) | 60,500円 |
胚凍結費用x1個 | 20,000円 |
SEET法培養液凍結費用 | 11,000円 |
合計 | 91,500円 |
税込合計 | 98,820円 |
SEET法培養液凍結というのは、凍結胚を移植する際に、培養に使っていた液をいっしょに戻してあげることで、環境の整備として妊娠・着床率をあげる手法の、液凍結費用です。SEET法を実施したほうが妊娠率は向上しています。
というわけで合計約10万円。これが培養完了後の診察の際に支払う料金でした。
まとめ
以上、初めての体外受精・顕微授精の培養までを2回に渡って掲載してみました。
採卵と培養合わせたこれまでにかかった合計がこちらです。
採卵費用 | 448,653円 |
培養費用 | 98,820円 |
税込合計 | 547,473円 |
いやぁ厳しいですね。これで、妊娠までたどり着いてくれれば仕方がない費用なんですけどね。実際には胚盤胞1つとなると、やはり不安です。
とはいえ、今は、なんにせよ胚盤胞が1つでも確保できたことをよかったと考えています。この1つを大事にできたらと思います。
移植に向けて夫婦で体調を整えて行きたいと思います。
以上、長文読んでくださりありがとうございました。
コメント
こんにちは。
先日よりサイトを拝見させて頂いています。
色々と検証されていて、自分も男として大変興味深いです。
年齢も近く、情報交換されて頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。
コメントありがとうございます!
少しでもお役に立っていたら幸いです。
はい、ぜひ情報交換できたらと思います。
よろしくおねがいいたします。
こんにちは。
早速ご返信ありがとうございます。
こちらに書き込ませて頂いた際に、メールアドレスを記載しますが、ケイジさんは私のアドレスを把握されていますか?
もし可能でしたら、メールでもやり取りさせて頂きたいです。
書き込みするとコメントが公開されてしまうので…(^_^;)
はい、メールさせていただきます!